いいことだ。

えっと。
よくわからないんだけど。
ここのところ
ずっとタツヤが近くて。

なんだろ？
素直に甘えてはいるけど
というか
素直に甘えられるようになったから
タツヤを近く感じるのかな？


んー

確かに、何かが変わった気がする

会う回数や時間が増えたわけでもないし
特にどこかに出かけるわけでもなく
とりたてて大きなイベントもないし



よくわからないけど
離婚から満12年
タツヤと出会って12年半

これだけひとりのオトコと付き合ったこともないし
変わっていく自分に恐れることも少なくなったし


「いつ死んでもいい」って
思いながら生きてきた20代
自分の価値を
対人関係の中だけでしか計ることができず
苦しむことで生きている実感を得ようとしていた

自分の生き方を模索し続けた30代
「自分を生きる」ことがテーマとなり
ありとあらゆる葛藤が押し寄せ
それでも
そんな苦しむ私を支えてくれる人たちと出会った

そして今
少しずつ少しずつ恐れるものが減り
ゆるくゆるく生きることも
自分らしさだと思い知らされ

そんな生き方をずっと
ずっと傍らで見てきてたタツヤ

だから
この私の変化を一緒に喜んでくれて
その変化した私を嬉しく思ってもくれる


何かで読んだ
“性格を変えることは難しいが
性格を知ることで行動を変えることはできる”

うん、

まぁ、いいかな。



自分の変化を感じられるようになったことは

しかも怯えていた感情から
その変化を感じられたということは
うん、


いいことだ。

ふたりの距離は透明すぎる

近くて近くて


激しい痛みが私を打ちのめす
中学時代から慢性胃炎
いつ痛くなっても驚かないくらいだけど
ここのところ
その回数と痛みが増していて

いっしょにいるタツヤさえ不安にさせてしまう


　　大丈夫？
　　胃潰瘍とかになってるんじゃない？


　　わたし
　　へりこばくたーぴろりきん持ってない


　　ね、今
　　その言葉を言いたかっただけでしょ？
　　「ピロリ菌」



音に反応する私のクセ
気になる音を持つ言葉
十数年も一緒にいれば
それくらいわかるよ、って


近くて近くて


胃の痛みはどうしようもない
薬を飲んでもそんなにすぐに効果が出るわけでもなく


引かない胃の痛み
タツヤが私の近くにいる



最近、また近くなっている気がする




ふたりの距離は透明すぎる



時折
見えなくていいものまで
見せてしまうほどに



ふたりの距離はあまりに透明すぎる

すごいなぁ

今年の初めから
なんとなく話は聞いていたけど

タツヤの海外赴任
どうやら現実味を帯びてきたらしい
1次候補にあがりそうだ、って

震災で立ち消えになりそうだった
海外での新規事業立ち上げの話
ここにきて急に加速したみたい



叩き上げで
院卒の人たちの中で
独学と意地
人よりも数倍の努力
十数年近くにいてずっと見てきた

すごいなぁ
私のしてきた努力なんて
タツヤの足下にも及ばない



今年は本当にタツヤを見直すことばかり
震災直後の生活防衛力や
社会情勢を見極める力
まぁ、
一般社会人として当然と言えば当然なんだろうけど
今の私にとっては
その視点や思考は
「すごいなぁ」と感じるもので



海外赴任が正式に決定したら
それはそれで
すごいことだし

反面
ちょっと寂しかったりもする

けど
まぁ
海外に遊びに行く機会ができると考えれば
まぁ
それはそれで良し、かな


あぁぁ
退屈で平凡だなぁ
私の毎日は


勉強しないとなぁ…

未だに理解不能

本当に不思議なんだけど
タツヤは私のどこがいいんだろう？

最近は忙しさを言い訳に
食事も作っていないし
部屋の中だって決して片付いてない

今の仕事に着く前に比べ
だいぶ体重も増加
容姿端麗なわけでも
頭脳明晰なわけでもなく
収入がいいわけでもなく
性格だって
扱いにくい部類に入ると思う


10数年一緒に過ごしてきたとはいえ
同棲している訳でもなく
途中、関係を解消していた期間もあったし
詮索もしないから
いくらでも他にいいひとがいてもかまわないのに


どこがいいんだろ
こんな私の


わからないなぁ

私がオトコだったら
こんなに
自己主張の強いオンナ
付き合いづらくてイヤだと思うけど

反面
束縛もしないし
詮索もしないし
用がなければ連絡もしないから
楽といえば楽なオンナかもしれないけど


ま、いいか。
それ考え始めると
また眠れなくなるから。


しかし
不思議だよねぇ。

お約束

タツヤが仕事帰りに部屋に来た

　
　　来週の土曜日、
　　休みだって言ってたよね？

　　うん。

　　久しぶりの土日休みだから
　　行きたい、って言ってた日帰り温泉行く？

　　いくっ!!



ここのところ
土日休みが取れても
実家に戻っていたりしたから
タツヤと土曜日を過ごすのは随分と久しぶり

きちんとした休みは
基本的に日祝日しかない私
平日に休みが取れても
医者やそのほか用事があって取るから
ゆっくり過ごすことなんてできないし

日曜は家の中のことをして終わってしまうから
本当に二人で過ごす時間が少なくなってる

タツヤとの時間も大切にしなくちゃね



何よりも


雪の露天風呂が待ってるぜいっ!!

朝イチ露天風呂だぜいっ!!

楽しみだぜいっ!!



さ、寝るぞ。






待ち遠しいね、来週の土曜日。

雨の香りと重ねる時間

ドアを開けると
雨の香りと少し冷たい空気
そこに
久しぶりにタツヤがいて

手に持つケーキの箱と
ジャケットのポケットからはパソコン
なんだか
タツヤらしい


タツヤの連れてきた
雨の香りが妙に艶めかしくて
この感覚は
今まで他のオトコからは感じたことがなく

そして

少しだけ遠のいていた
オンナとしての感覚が
タツヤに呼び起こされる




そう、
きっと
私のカラダが
タツヤを求めていた
重ねる時間は
ふたりがオトナである証


雨の音に耳を傾けながら
となりの軽い寝息を聞く
そんな僅かな時間が
私に
オンナである私に
どれ程の暖かさをもたらすのだろう




明日からはまた
ふたりとも激務の毎日

重ねる時間がほんの少しであっても
そこに暖かさを感じられるから




明日から、また

Blue Moon

仕事が忙しく
連日10時過ぎまで残業をしているタツヤ

不調が続き
帰宅すると脱力で横になっている私


ふたり
久しぶりに食事を共にする

間接照明だけのほの暗いこの部屋で
何を話すわけでもなく
ソファにもたれかかり
ゆっくりと時間が流れていく



Blue Moon
今日は
今月２度目の満月
見ると幸せになると言う

その月の美しさよりも
流れる雲の儚さよりも
今はなによりも
共に過ごす時間が愛おしく



しばらく
カラダも重ねていない
私の体調が悪すぎて
応じることができずにいる
それでも
私はタツヤの右側
タツヤの右腕に包まれ
こうして
流れる時間を感じることができる



Blue Moon

その冷たい美しさよりも
隣にある確かな温かさが

今
私の救いとなっている

素直じゃないからね

もうすぐ ひとつ

歳を重ねる

去年は台湾で迎えた

今年は

雪の露天風呂　って

タツヤが言った

　　　　　

楽しみだけど

歳をひとつ重ねるということは

また

タツヤとの年の差がひらくということ

でも

こうしてふたりの約束が

きちんとふたりの予定になる

そんな事実が

いちばんのプレゼント

仕事が多忙を極めるタツヤの

貴重な１日を私が独り占め

なのに

いつも言えない

今年こそは

きちんと

伝えなくちゃ

ありがとう、って

平和な日

最近

すごいなぁ、と

つくづく感じることがある。



タツヤの理解力。





殊に私の表現が何を現すのか

即座に理解できるようになってきて。



もともと

擬声語や擬態音でモノを表現するクセのある私。

今日の会話でも

　はいはい

といった感じで普通に聞き入れて。







「ひゅぅーるりぃー♪」な北陸（様子を現す）

「みょんみょん」した道（峠の路面の様子）

「ぴろぴろ」（文房具）







タツヤ曰く

　10年も一緒にいれば通訳できるよ

とのこと。













タツヤ提案で

今朝は早起きして秋を求めて

オープンフェアー（ｵｰﾌﾟﾝﾄﾞﾗｲﾌﾞ)。

今日のドライバーはタツヤ。

サイドシートで暇をもてあます私は

ひとりゴキゲンでしゃべり続け

タツヤは

それを制することなく穏やかに笑い

ごく自然にふたり

秋の気配を満喫。







平和だなぁ。



何事も理解してもらえるって

すごく幸せなことなんだろうなぁ。



でも

そのおかげで？

普通の語彙が

凄く少なくなってきている気がするのは

私の気のせいかなぁ？





秋の日。

なんて平和ないちにちなんだろう。

なんだか、ね 戸惑うのだよ

なんだかね





タツヤがね







ここのところ妙に

妙に優しいのよね







会うのは１週間に１度か

それ以下の頻度だけどね

なんだろう

今までに感じた事のない

穏やかな優しさでね







私プレゼンツで

私の知り合いの

フレンチレストランで

タツヤのお誕生日を祝ったりね



私リクエストで

オープンドライブin山の中

とかね



私からの接触も多かったけど

だから、かな？





んー

これがね

何かを隠そうとしている

見せかけの優しさとは違うのだな



今までのふたりをふり返ったり

これからの予定を

私ありきで考えてくれたりね







なんだか、ね







戸惑うのだよ、未だに。





こういう優しさに対してね

私には免疫が無いのだな





きっと



優しさに対応する受容体が

私は欠損しているのよね



愛情という

優しさの伝達物質も

欠乏しているのよね









なんだか、ね





戸惑うのだよ。