それぞれの道

もともと別の道だったのが
いつの間にか平行して走っていて

時々合流してみたり
高速道路になったり
砂利道になったり

月日の経過は
道路の見えない劣化も生じさせ

そしてそれぞれの方向に
新しい方向に
伸長していくだけのこと


私たちは並行していた道を
少し離して
歩むことになりました

できごと

「彼」を示す番号からのコール
躊躇いなく出てしまう

　　ごめん、間違って押しちゃった

2年ぶりに聞くその声に

　　うん

とだけしか答えられなかった



話したいことはたくさんある
伝えたいこともたくさんある

だけど
許されるだけの時間なんてない
許されるはずもない


これが
今日のできごと

　　また、いつかね

おとなの約束は
守られることのないものだと
私は充分に知っているから


これが今日
私に起こったできごと

かなしい。

桜が、

雪が、

かなしい。



この手に触れることのない
こぼれ落ちてゆく時間。

“逢いたい”
その言葉が私に触れたから



“欲しい”
と言われたこのくちびるが



かなしい


一度は握りしめた手のひらの中
もう
そこからこぼれないよう
押し込めたココロが



桜のよう

こぼれて落ちてゆく




春が

かなしい