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ふたりだけの同窓会 [hearts]


小学校の時
勉強も運動もできて快活で
クラス委員長とか毎年やってて
すごく優しい男の子がいた。
ゆうちゃん。

その子と女子の人気を二分するように
サッカーができてちょっと勉強は不得意だけど
すごくリーダーシップがあって
意地悪するけど何故かモテてる男の子がいた。
まっちゃん。

なにかと女子の間で話題に上るこのふたりの男の子
転校してきたかわいくて活発な女の子…ゆかちゃん…が
どちらを好きになるか
やきもきしていた女子がたくさんいた。

そんななかゆかちゃんが選んだのは
身長が高くて足が速くて優しい男の子
その子は
決して人をいじめるようなことはしない子。
うめじくん。

もちろん、うめじくんも人気が高くて
うめじくん派の女の子はゆかちゃんの行動に
一喜一憂していた。

…わたしは
その頃の私は なかちゃん が気になっていて
ゆうちゃんともうめじくんとも仲良かったけど
同級生の仲良し、という感じだけだった。

ゆうちゃんは小学校卒業と同時に他市に引っ越し
うめじくんとは中学校も同じだったはずだけど
1学年450名近い生徒がいたせいか
話をした記憶も全くなかった。


中学を卒業して30数年、
目の前にいるうめじくんはすっかり渋くなっていて

 もう白髪ばっかりだよ

って
あの頃と変わらない笑顔で笑ってた


…わたしは
すごく真面目で堅い子だと思われていたらしく

 あ、なんか会ってすごく印象変わった
 俺のイメージだとすごく真面目だったから
 会ってさ、
 政治の話でもしなくちゃいけないかと思ってた

って。


お互いの30数年という年月が
重なる思い出と
それぞれの人生の機微を感じさせ
お互い地元を離れて生活している感覚とか…
共有できる思いもたくさんあって


ふたりだけの同窓会は

 あいにきてくれて
 ほんとうにありがとう

その言葉に終始する


うめじくんが

 再会したことだし
 手をつないで帰ろうか

って
私の左手をとって
自分の右ポケットに入れたとき

小学校のグランドを走り回って転んだ私を
助けてくれたうめじくんの手を思い出した

おとなのドキドキじゃなくて
なんだろ、
懐かしい感じ。


駅までの10分。
タクシーを待つ10分。
笑って昔話をしている私の左上に
うめじくんの笑顔があって
うめじくんの手のあたたかさがあって
早い朝を待つ駅のロータリー
私には
夕焼けのグランドが重なって見えていた。




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てがみ。 [hearts]


ことし初めから関わってきた件が
特集として全国紙のトップをかざり
その流れで私のコメントも少しだけ掲載され

その担当記者さんからお礼の手紙が届いた

 証人尋問のなかでmamiaさんの話されたことが
 私の伝えたいことだ、と思いました

記者さんらしい端的な
そして温和なことばでつづられた手紙に
私も勇気づけられた

特集として取り上げる題材は
とても繊細な問題であるがゆえに
加害者を一方的に責めるものにならないか
加害者の背景にある問題をどう伝えたらよいのか
記者さんも考えていたようで


仮に
本当に
証人尋問で私の語ったことばが
記者さんの「伝えたかったこと」を
後押ししたのであれば
あの時
あの場所に
私が立った意味が確かにあったんだな、って


弁護士さんにとっては
いかに刑を軽くするか、が仕事であって
私たちの立場からしてみれば
支援を求めることができない人に
どう支援を結び付けていくか、が求められていて
視点の違いがあるからこそ
多面性をもつ社会問題にも向き合えるわけで


あの日、私は確かに
はっきりと、しっかりと答弁をした
それが
要支援者のみならず
違う視点から社会問題として
この件をとらえていた記者さんにも
しっかりと届いていたことに
驚きと喜びを感じている


数社の記者さんからインタビューを受けたけど
この社の記者さんだけが
本当に私が伝えたかったことを
きちんと受け止めていてくれたことに
感謝も感じている


仕事じゃなくて
ボランティアでやっているということが
一番のポイントなんだけどね


てがみ。

ちょっとだけ
自分の存在を認めてもらえた気がする。




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儚いからこその優しい思い [hearts]


大丈夫、大丈夫。

たくさん、たくさん、T氏のこと、思い出した。
涙が溢れそうになるほど
あの頃の思いが今の私を独占していたけど
でも、大丈夫。


儚いからこそ、優しく、思いだせる。
あの頃のようなつらさよりも
優しい思いが私を包む。


大丈夫、大丈夫。
たくさん思い出して、
たくさん優しい思いで包んで、
そしてまた、
優しい思い出として
そっと、そっと、ね。

大切に、大切な、思い出として、ね。


儚いからこその優しい思いが
私とT氏の間にそっと流れたような
そんな気がする。


ね。


だから、
もう、きっと、だいじょうぶ。






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ごめんね。ごめんね。ごめん…ね。 [hearts]

ひとりでロングドライブ
北の街への道のりは
あまりにたくさんのことを思い出させる

車内を流れる音楽はどれも
私のお気に入り
だけどそれがまた思い出を呼び寄せてしまう


達弥さんのことも
T氏のことも
たくさんたくさん思い出した
…思い出してしまった。
 忘れていたことさえも。

達弥さんはいい。
青く未熟だった私の幻影にも近いから。
気配だけを残して一瞬にして消えたから。
残ったのは、思い出。


でもね、T氏はね、T氏だけは
私の感情のすべてがT氏に支配されて
そしてそれを忘れるために
合わせた両手のひらの中にぎゅっと、ぎゅっと
そしてそれを二度と開かないように
胸元に突き刺すように堅く、堅く閉じ込めて

そんな思いだったから


T氏の声を聞いてしまったのは
私の浅はかな企み
きっと、だいじょうぶ、
T氏はもう前のT氏じゃないからだいじょうぶ、
そう思っていた私の過ち。










車道の向こう側
出勤途中の彼が立ち止まり
大きく腕をひろげて笑って見せる

 なに?なんだったの?

あとで尋ねる私に屈託なく笑い

 胸に飛び込んでおいで、のサイン
 わからなかった??
 
それからは
腕を広げる彼を見ると
大きくうなずくのが私の日課になった


残業で遅くなる私の車
ワイパーに挿まれたメモ

 少し待ってたけど遅くなりそうだから
 先に駅に行くね
 20時の電車に乗る予定
 仕事頑張って

そのメモを握りしめ駅に急いで向かう

約束もしていないのに
駅のロータリーに彼の姿があり
まるでお迎えに来るのを待っていたかのように
私の車に乗り込む
二駅分、ほんの10分程度の距離
私は車を走らせ
だいじに、だいじに過ごした

20時の列車を見送り
ひとけのない駅の片隅
彼の左手が私の右手を握りしめ
彼の右手が私の頭をそっと引き寄せる
彼の胸元で
私はため息にも似た深呼吸をするだけ
言葉にすれば
言葉にしてしまうと
消えて行ってしまいそうな時間を
ふたり
こころが軋む音を聞いてすごした


許されないことはわかっていた
彼も私も
すべてを投げ出せないこと、



わかっていた



だから



時間と物理的な距離に頼るしかなかった



でも時間と物理的な距離は
時として簡単に心理的距離へとその姿を変えてしまう
あたかも何もなかったかのように姿を変えてしまう
もろく、はかなく、きしみながら。










彼は転職しました。
今も
あの頃と同じフィールドで専門職として
凛として活躍しています。

私は同じフィールドから離れ
まったく違う仕事に就いたはずでした。
だけど今また
図らずも
指先だけ同じフィールドにかけてしまいました。



彼からもらったメモもCDも
引っ越しの時に捨てました。
ふたりで写っている写真は…
捨てられない自分がありました。





ごめんね、
ごめんね、

こんなにつらい思いをしてきたのに
また…





ごめんね、

思い出すとつらくなるのわかってたのに
また…





ごめんね、


ごめんね、
ごめんね、

誰に謝ってもこの気持ちはどうにもならない





ごめん…ね。





いまの私を支えてくれているのは
タツヤ以外の誰でもないのに。







ごめんね。








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声を聞いてしまったので [hearts]


とてもとても
大切な思い出でした。

とてもとても
大好きな人でした。

心の破片を探してみても
今さら探してみても仕方ないこと
わかっています。

でもあの軋むような切なさを
今も忘れきれずにいるのです。


今日は
そんないちにちでした。


声を
大好きだったひとの
声を
聞いてしまったので。


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Nostalgy [hearts]



昨年からいろいろと勉強会にも参加して
様々な方からの刺激をうけながら
なーんとなく活動をしてきている感じで
そして初めての頑張りどころで

おとといの夜
4時間近くかけて仕上げた書類を
あろうことか保存ミスをしてしまい
すべてが消え去った…という出来事を乗り越え

気持ちを切り替えて
お休みの今日をリベンジにあてたけど

折からの不調で集中力が続かず
無意味なエゴサーチしてみる
はいはい、出てくるわけないし。

懐かしい友達の名前とか検索窓に入れてみるけど
そんなに個人情報ばらまく人もおらず
もっともといえばもっとも。




そんななか
もう30数年も前のことを思い出し
それはそれは
つよくてやさしくてせつない思い出で
そのひとの名前の入った検索窓をみて
このひとの名前は絶対にかかってくるの
判っていてやってみようと思う自分が
ちょっとみすぼらしく感じたりもして

このひととの出会いが
今の私の始まりだったなぁとか
このひととの出会いが
自分のやりたいことってなんだろうって
考えたきっかけだったかもとか

まあ、しばらくそんな感情が私の中で右往左往して

ぽちる。



かなりの雑多な記事の中に
その人を指し示すいくつかの記事がみつかり
家業を継ぎ様々な活動をしているのが見て取れて
あー、このひとはいつも前向きだったな、って。

大学入試だめだった、って連絡をもらっても
私は何もできなかったし
物理的な距離もあったから
遠い場所でおきていることのように感じてて

その昔修学旅行のお土産でもらったネックレス
まだしっかり私の手元に残ってる
高校時代もブレザーの胸元校章の裏に付けて
胸ポケットにずっと潜めてて
ちゃんと裏に「まみあ」って
なまえ彫ってあって
もらった時すごくすごく嬉しかったの。
友達に自慢もしちゃったし。


すごいな、
ポスターにもなるくらいメインで頑張ってるんだね
すごいな、
私よりも2つ上なのに若々しいし
あの頃もそうだったけど結構イケメン
あの頃から身長高かったし
魚釣り趣味だったし
変わってないね。


ここにいる私は
あまりにちっぽけで何もできなくて
どこへ向いたらいいのか
いまだに迷い続けていて



ねぇ、たつやさん、
私の最初のあこがれの人って、たつやさんだったんだよ。
たつやさんの彼女のように
自分の力でいろいろチャレンジできる女性になりたいって
そう思って
それで実家をはなれる勇気をもてたんだよ。


あの頃無力だった私は
今も変わらず無力だけど

あの春の日の新京極のかたすみで
雨上がりの曇り空の下
ちょっとだけもらったやさしさは
今もわたしの大切な思い出で

あの頃より歳をかさねたぶんだけ
強くなってるよ
いろいろ乗り越えてきたよ
自分のちからで生きてるよ。



さあ、ここからは自分のちからで頑張らなくちゃ
消失した書類はまだ出来上がってない
昼間蓄えたエネルギーを注がなければ

セピアがかってた思い出が
ちょっとだけ色を取り戻して
ちょっとだけ複雑な感情が顔をのぞかせたけど

さ、前をむかなくちゃ。





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情景 [hearts]


だいぶ、さぼってました。
事情はさておき。



先週末、遅い夏休みをとりました。
学生時代の思い出の場所を訪ねてきました。

2016-09-10 011.jpg

学生時代、夏休みの1カ月ちょっとを
住み込みでバイトしたホテル。
今回は別の目的があったので
そのホテルには泊まりませんでしたが
湖越しの遠景に見るホテルは
何とも言えない懐かしさを帯びていました。



2016-09-09 002 (2).jpg

ここでたらい船、乗りました
たくさん写真は撮ったのですが
ブレブレで…

2016-09-10 013.jpg

おけさを踊る姿を模した看板に
この標語…
あと「シートベルトしめて それあたりめ」っていうのも
ドライブ中に見つけました。


たくさん、たくさん書きたい事あるんだけど
自分の気持ちを表面化するのが今とても辛くて

ひとの感情に巻き込まれて
ちょっと自分の感情のコントロールに手間取っていて
そんな状況がしばらく続いていて


学生時代のひと時を過ごした場所を訪ね
懐かしい時間を思い出し
それを隣でタツヤが聞いていて
いつもと変わらない毎日を送っています

いつもと変わらないようでいて
ほんの少しずつ何かが変わっていて
それを感じないように過ごしています

感じてしまうと
そこに感情を持っていかれてしまいそうになるから


もうすぐ秋が来てすぐに冬が来て
ここに引っ越してきて1年を迎えます
時間が
正確に刻まれています


あしたも、お仕事、
いつもと変わらないよう頑張ってきます



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初体験キャンペーン、絶賛継続中。 [hearts]

今年、勝手にひとりでキャンペーンを行っています。

私の年齢になると、
なかなか「初体験」ということが少なくなってきて
若かった頃のような新しい様々な誘惑やお誘いも
ぐーんと減ってきて
何をするにも上書きだったり
プラスアルファくらいの刺激で。

所謂「普通」とか「通常」の場合
子どもがいて、ともすれば孫がいて、という年齢で
子どもや孫を通して新しい体験や刺激も受けるはずだけど
私にはそれも欠損しているため
今年は「初体験キャンペーン」なるものを意識。


…やってみたいと思ったこともなかった「ハイキング」
 これ、春先に馬籠~妻籠を歩いてみました。
 サクラの花びら舞う宿場町から宿場町を
 古の旅人と同じように山の中、風に吹かれ。
 情緒を感じつつ
 タツヤとケラケラ笑いながら8キロの山道を歩き。
 結構気持ちよかったので
 中高年がハイキングにはまる気持ちを理解してしまいました。


禅寺で「座禅」
 予想していたような神秘感は無かったけど
 体験としてとても良かったし、またやってみたい!!


…趣味違いだけど「オペラ鑑賞」
 知人から毎年のように誘われていたけど断り続けていて
 でも、キャンペーン中なので行ってみました。
 んー、寝てしまった!!
 そしてセレブ婦人臭が漂うホールの違和感を実感!!
 私には場違いだったわ、ということが解った、という体験。


…やってみたかったけどやってこなかった「カヌー」
 やってよかった~
 これ、これからの趣味になりそう!!
 来年の春、今から行く気満々。


それから。
先週末、友人のJさんに誘われて見に行ってきました。
…「DRUM TAO」のステージ
  ~百花繚乱 日本ドラム絵巻
 初体験、というより「上書き系」ですが
 その迫力とか斬新さは2時間ちょっとの間続き、
 一瞬たりとも舞台から目を離せないほどの美しさと力強さでした。
 友人のJさんは「EXILE的な人たち」と言っていましたが
 長髪率が高いのと、筋肉見せつけ感の高さ、
 もちろん人を惹き付けるパフォーマンスのすばらしさも
 EXILEには負けていないと思う私です。
 

もしかしたら日々見逃している
ちょっとした「初体験」もあるのかもしれませんが
意識して「初体験」を探すことも時には必要だな、と思います。
基本、ひきこもりが大好きな私なので
「カラダを動かす」「アクティブ」なんてのは
これまで避けて来た経緯があります。

これから先の人生、
どれだけの「初体験」が待っているかわかりませんが
待っているばかりではなく、
自分から飛び込んで行かなくては
出会う数も少なくなってしまうような
それって、人生すごく残念なことなんじゃないかな、って。


今年もあと2ヶ月ちょっと、
どんな「初体験」が待っているか楽しみ。
…と、同時に。
17年ぶりに「最大の上書き系」が待っています。
これにもうすぐ突入し、
そして疲労困憊の日々がやってくるのです。


次の更新はいつになるのやら。



 
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こんな休日のすごしかた [hearts]


前々からすごく気になっていたので
思い切って行ってみました

座禅体験一泊
syoukakuji1.jpg


昨日16:00に入山し
さっそく16:30から一回目の座禅
40分の座禅の後、般若心経を唱え
和尚様の説法

音を立てることが禁止されている食事ですが
薬石(お夕飯)はとても美味しかったです
入浴、
21:00には消灯
テレビもない静かな時間を過ごしました

一緒になったのは
相模原からおいでになった30代のご夫婦と
イギリスからお見えになった女性と私
片言の英語でつたないながらもコミュニケーション
プチ国際交流。
イギリス国民の心配事はチャールズ皇太子が即位されたときの
カミラ婦人のことみたいです
早くウィリアム王子の代になって欲しいと願っているとか。
俗世間にどっぷりはまった会話ですが…

朝は本来5:30起床、6:00から座禅の予定ですが
和尚様の都合で5:00から開始
眠気と肌寒さが相まって
いつもとは別の時間を過ごしている実感がありました。

その後は作務(お掃除)、小食(朝食)。
1時間早く座禅が始まったため作務と小食の間
1時間ほど時間があったので
少し周囲を歩いてみました。
syoukakuji2.jpg


syoukakuji3.JPG


小食の後、解散。
私は写経もさせていただきました。
イギリスからお見えになっていたカレンさんとも
お別れの挨拶をして
無言で40分程かけ写経しました。

和尚様の法話の中で
「帰依」何かを頼ることも必要、と話されていました。
今の私には
「八正道」仏教の基本的な教えになるほど、と感じ。


うん、こんな休日の過ごし方もいいな、と。
ひとりで過ごす時間が
こんなにも有意義に感じたのも久しぶり。

日帰り座禅もできるみたいなので
今度は中食(昼食)をいただいてみたいな。


そう、座禅の感想ですが。
運動不足(ほぼ運動をしていない)の私にとっては
結構しんどかったです。
ほのかに全身筋肉痛…
そんな状態なので頭を空っぽに、なんて
ぜーんぜんできませんでした。




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そんなときもあったね [hearts]



久しぶりに早い時間の入浴
気持ちを落ち着かせたくて
明るすぎると感じる光を落とし
大好きなアロマキャンドルの灯火だけに身をゆだねる

何を考えるわけでもなく
ただ体温より少しだけ暖かい温度を纏い
時間を忘れるかのように目を閉じて過ごす



N県で過ごした短大時代
ああ、そんなときもあったね、とふと思い出す
いつもは新幹線で帰郷
だけど在来線で7時間もかけて実家に帰ったことがあった

当時は珍しかった「寅さん」のような大きな革のトランク
お気に入りのトランクを
全身で持ち上げるようにかかえて電車から降りる
高校時代に乗り換えをしていたK駅
ほんの数ヶ月下車しなかっただけで
ずいぶんと変わったように思えた

大きなトランクを抱えて下車する私を見て
駅員のおじさんに
 ずいぶん重そうだね
 何が入ってるんだい?
と声をかけられた

私は何気なく
 夢と希望
と答えた

おじさんはにっこり笑って
 それはいいものが入ってるね
そう笑っていた


そんなときもあったね


あの頃…いまから30年近く前…
漠然と私は長く生きる者ではないと感じ
バブルに踊らされている世間を傍目に
きっと周りから見たら扱いにくい
変わり者的な
そんな生き方をしていた

だけど
 夢と希望
それは有ったような気もする

他人になかなか受け入れられない考え方と
持て余すほどの情感を押さえつけ
それでも何かを感じとってしまう自分と
どうにも動けない自分と
自分自身でどう自分を取り扱ったらよいのか
葛藤の毎日だった気がする


いまは?
いまの私のトランクには何が入ってる?

疲労と妥協
それと猜疑心



あの頃の私が今の私を見たら
いったいどう思うだろう

相変わらず、器用には生きられてないね
自分を楽にしてあげてたはずじゃないの?



今のトランクを開けてすべて解放して
新しく荷造りする頃には
どんなものが入るのだろう


夢と希望 もうちがう
愛と勇気 それもちがう
歩く力と止まる決心
まだちょっとちがうな

歩く決心と止まる力 

かな



いつのまにか湯船の温度は
体温とさほど変わらなくなっている


暗い駅のプラットホームに立ったあの頃の私は
たしかに
いまここいるんだけどね




そんなときもあったね





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