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そんなときもあったね [hearts]



久しぶりに早い時間の入浴
気持ちを落ち着かせたくて
明るすぎると感じる光を落とし
大好きなアロマキャンドルの灯火だけに身をゆだねる

何を考えるわけでもなく
ただ体温より少しだけ暖かい温度を纏い
時間を忘れるかのように目を閉じて過ごす



N県で過ごした短大時代
ああ、そんなときもあったね、とふと思い出す
いつもは新幹線で帰郷
だけど在来線で7時間もかけて実家に帰ったことがあった

当時は珍しかった「寅さん」のような大きな革のトランク
お気に入りのトランクを
全身で持ち上げるようにかかえて電車から降りる
高校時代に乗り換えをしていたK駅
ほんの数ヶ月下車しなかっただけで
ずいぶんと変わったように思えた

大きなトランクを抱えて下車する私を見て
駅員のおじさんに
 ずいぶん重そうだね
 何が入ってるんだい?
と声をかけられた

私は何気なく
 夢と希望
と答えた

おじさんはにっこり笑って
 それはいいものが入ってるね
そう笑っていた


そんなときもあったね


あの頃…いまから30年近く前…
漠然と私は長く生きる者ではないと感じ
バブルに踊らされている世間を傍目に
きっと周りから見たら扱いにくい
変わり者的な
そんな生き方をしていた

だけど
 夢と希望
それは有ったような気もする

他人になかなか受け入れられない考え方と
持て余すほどの情感を押さえつけ
それでも何かを感じとってしまう自分と
どうにも動けない自分と
自分自身でどう自分を取り扱ったらよいのか
葛藤の毎日だった気がする


いまは?
いまの私のトランクには何が入ってる?

疲労と妥協
それと猜疑心



あの頃の私が今の私を見たら
いったいどう思うだろう

相変わらず、器用には生きられてないね
自分を楽にしてあげてたはずじゃないの?



今のトランクを開けてすべて解放して
新しく荷造りする頃には
どんなものが入るのだろう


夢と希望 もうちがう
愛と勇気 それもちがう
歩く力と止まる決心
まだちょっとちがうな

歩く決心と止まる力 

かな



いつのまにか湯船の温度は
体温とさほど変わらなくなっている


暗い駅のプラットホームに立ったあの頃の私は
たしかに
いまここいるんだけどね




そんなときもあったね





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