視線、25cmうえ。

久しぶりに25cm上に視線を向けた
ずいぶんひさしぶりだけど
以前となにひとつ変わらない視線がそこにあって
少しはにかんだ笑顔があった

今年に入って3回目
ちょっとした用事でちょっとだけ会って
それだけ



まわりのキラキラ輝いている人たちを横目に
いつもだめな自分を捜し歩いて
現実味をともなわない前向きな言葉を探して
どこかにたどり着きたくて捜し歩いて

誰かに必要とされたい自分は
20年前と何も変わっていなくて
誰かに、誰かに、って
私を必要としてくれる誰かを捜し歩いて

でも
誰かに必要とされるほど
なにも持っていないことにも気づいていて

少しだけ自分の生き方を肯定してきていたけど
ほんとは足元なんて少しも安定していない
ゆるゆると
ずるずると
ほんとはこころなんて少しも安定していない

周りからは
　いつもキラキラしているね
そんなことばをもらうこともあるけど

私がキラキラして見えるのは
安っぽいイミテーションの輝き
足元に飛んできた
少し光沢のあるなにかを貼り付けただけ
なにものでもない


何かを捜し歩いて
見つけた沼に溺れることもできず
踏み込むことさえできず
もう度胸試しさえできなくなった


それでも
私の視線25cmうえに
あの頃と変わらないものがあるのなら
今の私を知る由もなく
たぶん疑うこともなく
あの頃と変わらないものがあるのなら

それが
私の灯りとなるのなら
その灯りが消えないように

それを見守ることが
私の定まらない足元を
ゆらゆらするこころを
安定させる要因になるのかもしれない


春
風がとても強く吹いてたあの日
25cmうえの視線を
守りたいと強く思った。