SSブログ

こぼれる雫はゆうやみにとける 10 [こぼれる雫はゆうやみにとける]

 
あの頃、私、つらい恋愛していたの。
自分から終わりにしないといけない、って
わかっていても踏み切れずにいて。


あなたが私のことを気にしているんじゃないか、って
先輩から聞いたのはそんな頃だったの。
私、あなたの射とても好きだし、尊敬しているし、
いつも穏やかで礼儀正しくて…
そんな人が気にしてくれているなんて
ほんとかな、って思って。

あなたと視線があうと
すこしドキドキして
年甲斐もなく、ドキドキしてたの。
だったら、いっそ、つらい恋愛なんてやめて…
なんて思ったりもしたの。



そんなときにあなたから
「抱きしめたい」って言われて。
最初はとまどったけど
それ以上にすごく嬉しかったの。
私にも普通の恋愛ができるかもしれない、って。
ちょっと思ったりして。


 
エキストラたちは、
青の点滅信号を笑いながら渡っていった。

道を挟んでぼくと彼女だけが取り残される。
ビルの看板を見上げ
落ちてくる水滴を気にしながら
彼女が続ける。

ぼくは彼女の唇からこぼれることばを見つめた。




nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:blog

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。